経理・バックオフィス

経理業務の基本: 月次の流れと経理担当者とのやりとり

経理業務の役割、月次締めの流れ、事業部側がそろえる情報、経理担当者への確認文例を、会社員向けの基本として整理します。

更新日: 2026-08-02

まず結論

経理業務は、会社のお金の動きを「あとから説明できる形」にそろえる仕事です。単に領収書を集める、数字を入力する、請求書を払うだけではありません。売上、費用、入金、支払、証憑、承認、締め日をつなげて、会社の状態を見えるようにします。

事業部側の人が最初に押さえる型は、次の5つです。

1. 何のお金の動きかを説明できるようにする
2. 請求書、領収書、契約書、発注書などの証憑を残す
3. 締め日と支払期限を守る
4. 承認者、案件名、費目、金額、取引先をそろえる
5. 迷ったら支払いや申請の前に経理へ確認する

経理担当者は、社内の申請を疑いたいわけではありません。会社として正しく処理できるか、あとから監査や税務確認があっても説明できるか、支払漏れや二重払いが起きないかを見ています。

この記事は、経理担当ではない社員や若手担当者が、経理業務の全体像を理解し、経理担当者とスムーズにやりとりするための基本を扱います。具体的な会計処理、税務判断、勘定科目の最終判断は、自社の経理規程、経理担当、税理士などに確認してください。

経理業務で見ている3つのこと

経理が見ているのは、大きく分けると「事実」「証拠」「期限」です。

観点見ること事業部側で起きやすい不備
事実誰が、いつ、何を、いくらで、何のために取引したか案件名や目的が書かれていない
証拠請求書、領収書、契約書、発注書、納品書などがあるか添付漏れ、画像不鮮明、金額違い
期限締め日、支払期限、申請期限、承認期限に間に合うか月末にまとめて出して処理が遅れる

たとえば、同じ「3万円の支払い」でも、広告費なのか、備品購入なのか、研修費なのか、立替精算なのかで処理が変わります。経理担当者が知りたいのは、「この支払いをどのルールで処理すればよいか」です。

そのため、経理への依頼では「払ってください」「処理してください」だけでは足りません。取引の背景、相手、金額、期限、承認状況、添付資料をそろえる必要があります。

月次業務の流れ

会社の経理は、1日単位ではなく、月次で締めることが多いです。月次締めとは、その月の売上、費用、入金、支払、未処理の取引を整理し、会社の数字を一定のタイミングで確定させる作業です。

典型的な流れは次の通りです。

月中:
  取引が発生する
  請求書、領収書、契約書、発注書、納品書などが集まる
  経費精算や支払依頼を出す

月末前後:
  売上、仕入、外注費、経費、立替などを締める
  未着の請求書や未申請の経費を確認する
  承認漏れ、添付漏れ、金額違いを修正する

月初:
  前月分の数字を整理する
  支払予定、入金予定、未収、未払を確認する
  部門別や案件別の数字を確認する

月次締め後:
  経営管理、予算管理、資金繰り、振り返りに使う

事業部側から見ると、月末の経費申請や請求書提出は面倒に見えるかもしれません。けれど、1人の申請が遅れると、経理はその支出を入れてよいか判断できず、月次の数字がずれます。月次の数字がずれると、案件別の利益、部門別の予算、資金繰りの見通しにも影響します。

締め日は、経理だけの都合ではなく、会社の数字を使って次の判断をするための区切りです。スケジュール管理の基本と同じように、経理に関わる作業も締め日から逆算して管理します。

事業部側がそろえる情報

経理担当者が処理しやすい依頼には、共通して必要な情報があります。

取引先:
金額:
取引日:
支払期限:
案件名・部門名:
目的:
承認者:
証憑:
支払方法:
補足:

経費精算であれば、領収書やレシート、利用目的、参加者、案件名が必要になります。詳しい確認項目は、経費精算と領収書の基本で整理しています。

請求書払いであれば、支払先、請求金額、支払期限、振込先、契約や発注との関係、納品や検収が済んでいるかが重要です。経理は「請求書が来たからすぐ払う」のではなく、会社として支払う根拠があるかを確認します。

売上に関わる情報であれば、請求先、請求月、契約内容、納品日、請求金額、入金予定日などが必要になります。営業や事業部が持っている情報が経理に届かないと、請求漏れや入金確認漏れにつながります。

悪い依頼と良い依頼

経理への依頼は、丁寧な言葉よりも判断材料が大事です。

悪い例

この請求書、処理お願いします。
急ぎです。

これでは、何の案件か、支払ってよいものか、誰が承認したのか、いつまでに必要かが分かりません。経理担当者は、依頼者に確認を返す必要があります。

良い例

A社向け提案資料制作で依頼した外注費の請求書です。

取引先:
株式会社サンプル

金額:
税込110,000円

支払期限:
2026-08-31

案件名:
A社オンボーディング支援

状況:
納品物は8月2日に確認済みです。
発注時の承認は山田さんにいただいています。

添付:
請求書PDF、発注時の承認コメント

確認したいこと:
この内容で支払依頼を進めてよいか、費目に迷う場合は教えてください。

良い例では、経理担当者が確認すべき情報がまとまっています。すぐに処理できない場合でも、何が足りないかを判断しやすくなります。

経理担当者に確認するときの文例

経理へ相談するときは、「何を判断してほしいか」を書きます。ビジネスチャット・メールの基本と同じで、件名、背景、依頼、期限をそろえると伝わりやすくなります。

支払う前に確認する

○○案件で使う有料ツールについて確認です。

目的:
競合調査と提案資料作成のため、△△ツールを1か月だけ利用したいです。

金額:
税込5,500円

確認したいこと:
会社経費として申請可能か、事前承認や支払方法の指定があるかを教えてください。

補足:
利用後は調査メモを案件フォルダに残します。

支払ったあとに「経費になりますか」と聞くより、支払う前に確認したほうが安全です。規程外だった場合のやり直しを防げます。

請求書を受け取ったとき

B社から8月分の請求書を受け取りました。

内容:
B社向け運用代行の外注費です。

金額:
税込220,000円

支払期限:
2026-08-30

状況:
作業完了は確認済みです。
契約書と請求書PDFを添付します。

確認したいこと:
支払依頼の申請方法と、追加で必要な書類があるかを確認したいです。

請求書は、支払期限がある書類です。受け取ったらすぐに経理へ回すか、自社のワークフローに登録します。

締め日に間に合わなさそうなとき

今月分の経費申請について相談です。

状況:
8月分の領収書1件をまだ受け取れておらず、本日締めに間に合わない可能性があります。

内容:
C社訪問時の交通費です。

確認したいこと:
今月分として仮で申請できるか、来月処理になるかを確認したいです。

次にやること:
領収書を受け取り次第、すぐに添付します。

遅れそうなときは、黙って締め日を過ぎるより、早めに状況を共有します。悪い報告の出し方は、報連相と進捗共有でも扱っています。

勘定科目を丸暗記しようとしない

経理に慣れていない人は、勘定科目で迷いやすいです。けれど、最初からすべてを暗記する必要はありません。事業部側がまず説明すべきなのは、「何を買ったか」よりも「何のために使ったか」です。

よくある支出経理が確認したいこと
書籍・研修業務との関係、参加者、会社負担の対象か
ツール利用料利用者、利用期間、契約名義、継続課金か
外注費発注、納品、検収、契約や見積との関係
会食・会議費目的、参加者、1人あたり金額、事前承認
備品購入利用場所、管理者、金額、資産扱いになる可能性

同じツール代でも、部署全体で継続利用するものと、1案件だけで使うものでは扱いが変わることがあります。同じ備品でも、少額の消耗品と高額な機器では確認の重さが違います。

判断に迷ったら、費目名だけを聞くのではなく、利用目的、期間、金額、管理方法を添えて相談します。

月次で自分が見るチェックリスト

経理業務をスムーズにするには、月末だけ頑張るより、週1回の小さな確認が効きます。TODO・タスク管理の基本と同じように、自分の未処理を見える化します。

月次チェック

経費精算:
未申請の領収書がない:
電子領収書を会社指定の場所へ添付した:
目的、案件名、参加者を入力した:
差し戻し中の申請がない:

請求書:
受け取った請求書を経理へ回した:
支払期限が近い請求書を確認した:
納品・検収が済んでいる:
承認者が分かる:

売上・請求:
請求すべき案件に漏れがない:
請求金額、請求月、契約条件を確認した:
入金予定日を把握している:

共有:
締め日に間に合わないものを早めに共有した:
経理からの確認依頼に返信した:
次回同じ不備が出ないようメモした:

このチェックリストは、経理担当者だけのものではありません。経費を使う人、請求書を受け取る人、売上情報を持っている人も、自分の範囲だけ確認します。

よくあるつまずき

経理まわりでよくあるつまずきは、専門知識不足よりも、情報の不足や共有の遅れです。

つまずき起きること防ぎ方
締め日を知らない月次に入れられず、処理が翌月に回る締め日をカレンダーに入れる
請求書を個人で止める支払遅延や督促につながる受け取った日にワークフローへ回す
承認者が曖昧経理が処理できず差し戻す発注前に承認者を確認する
目的が書かれていない業務関連性を判断できない案件名、目的、利用者を書く
添付が読めない再提出が必要になる全体が読めるPDFや画像を添付する
差し戻しを放置する月次締めや支払に間に合わない返信期限をTODOに入れる

経理は、毎月同じリズムで回る業務が多いです。自分が同じミスを繰り返すと、経理担当者だけでなく、上司や取引先にも影響します。差し戻し理由を1行で残し、次の月に同じ不備を出さないようにします。

次にやること

今日やるなら、次の順番で整えます。

1. 自社の経費精算、請求書提出、月次締めの期限を確認する
2. よく使う申請システムや提出先を1か所にメモする
3. 未申請の領収書、未提出の請求書、未返信の差し戻しを確認する
4. 経理へ聞くときの文例を1つ、自分用に保存する
5. 毎週1回、経理まわりの未処理を確認する予定を入れる

経理業務を完璧に理解する必要はありません。最初に大事なのは、会社のお金の動きに関わる情報を止めないことです。

何に使ったか。証拠はあるか。誰が承認したか。いつまでに処理が必要か。この4つをそろえるだけで、経理担当者とのやりとりはかなり楽になります。